Q. まずは会社の歴史や成り立ちについて教えてください
株式会社メルヘン・プラザと言います。今から約30年前に岡山県の新庄村にある道の駅で直販をするために発足された会社です。第三セクターで発足されたのが始まりで、発足当初は行政の方が社長をされていましたが、約5年前に私が就任しました。
Q. 会社として大切にしている理念や考え方を教えてください
第三セクターの基本理念は雇用促進です。その為、事業としての利益追求には重きを置かない風潮がありました。しかしこのままの運営ではダメなのではないかと考えたこと。また新庄村には私が宝物と呼んでいるもち米があり、その普及をしたいと考え、事業運営の方針の転換を図って参りました。
Q. 御社の看板商品を教えてください
やはりメインはおもちです。新庄産のもち米「ひめのもち」は寒暖差により大変美味しいもち米です。今から約20年前に、会社としてお米だけを売るのではなく、加工しておもちを作って売ろうと考えたのが始まりです。次に大福もちを作り、その後、おせんべいなどにも発展させていきました。あらゆるジャンルにもち米を使った製品づくりを徹底的に行っています。
Q. 社長ご自身のこともお伺いさせてください
前職はオハヨー乳業に所属しておりました。当時は営業の取締役部長を担い、全国を飛び回っておりました。中学生までは自身も新庄村におり実家もあるのですが、オハヨー乳業在籍時に先輩でもあります新庄村の村長から社長就任の打診を受けました。営業部長としての実績を買われて、これまでにはない感覚を持って道の駅を運営してほしいと考えて打診してくれたようです。最初はもちろん悩みましたが、村へ貢献したいという想いは常に抱いておりましたので、最終的には打診をお受けした次第です。
Q. オハヨー乳業には長くお勤めだったのですか
はい。40数年在籍しておりました。元々は65歳くらいまで勤める予定でしたが、少し早く退職することになりました。当時のオハヨー乳業の社長に村のために帰りますという話しをしたところ、喜んで送り出してくれました。
6年前に道の駅をリニューアルオープンしたのですが、道の駅というのは全面的なリニューアルというのはしてくれないものなんです。例えばお手洗いなど、ある一部分だけを改修してくれるような形です。しかし申請をしたところ事業の取組みを認められて、当時の内閣府の特別な助成金の利用が許可されました。ただし従来の経営のやり方ではダメだというご指摘があったようです。そのような経緯から、民間で役員をやっていた人間を入れて事業の変革を行うことを提案したようです。それが私なのですが、全面的なリニューアルにあたり、最初のデザイン・設計の所からすべて私が関わっています。かなり細部までこだわって造りました。
Q. 仕事をする上で、気を遣っていることはありますか
やはりものづくりなので製品の品質には一番こだわっています。またお客様第一主義を掲げています。自分たちのやりたいことをやるだけではなく、お客様がどう考えているかを常に考えています。自分たちのやり方を貫くだけだとどこかで頭打ちになってしまいますよね。ですから常にお客様の立場に立ってモノづくりをすることを念頭に置いています。また地産地消も大事にしています。オンリーワン企業を目指しているんです。
Q. 座右の銘はありますか
私が常に言っている言葉があるのですが、「一歩前へ」という言葉です。もう一つは「自分を信じる」という言葉です。自分を信じ、仲間を信じて、最後に会社=家族を信じることです。自分を信じることが一番なのですが、だからといってエゴになってはいけないですよね。仲間が絶対存在するものですから。その次に会社です。常にその言葉を社員には言っています。
Q. 社長ご自身のこともお伺いしたいのですが趣味などはありますか
昔はあまりよくわからず、興味もなかったのですが、最近では美術に興味を持つようになりました。実はインドの方が描いた絵画を見た時に、大変共感したんです。完成までに約一か月掛かる絵画なんですが、驚くことにクシで描かれた絵画でした。
その絵を観ていると吸い込まれるような感覚の一方で、拒絶されるような感覚も抱きました。絵から感じた感覚を作者に伝えた時には、とても驚かれましたよ。それから関心を持つようになりました。
絵画は会社で飾るために購入したのですが、役員会で事情を説明したらみんな納得してくれました。
Q. 何をしている時が時幸せですか
やはり仕事ですね。会社までは車で一時間半掛かるんです。でもあえてそれを選びました。小さい村なので良くも悪くも噂が簡単に広がってしまいます。だから時間はかかるけれども通うことにしました。それに移動中には、色んなことも考えられるから、むしろ楽しいんです。5年間で約25万キロも移動していますよ。社員にも仕事している時が、一番輝いていると言われます。本当に仕事が大好きなんです。会社の先頭に立つことで、社員も安心できると思っています。
Q. 商品の成り立ちを教えてください
グルテンフリーであることと、もち米を使った商品を作りたいという想いから製品化した商品です。ただ100%のもち米は少し食べにくいんです。口の中に残ってしまいますので、どうしたら良いか悩んでいました。
そんな折、元々以前よりお付き合いがありました、岡山の「鈴木屋」というおせんべい屋さんに、もち米100%でなくても良いので、米粉を使った商品を作ってもらえませんかという相談をしたんです。
するともち米にこだわった商品を作るのであれば、鈴木屋さんの店主のお父様が同じように商品を作っていますということでご紹介いただきました。「くらしき藹然」というお店です。
お父様とお話をさせていただいたところ、もち米を50%入れてみるのはどうかというご提案をいただきました。お米は吉備中央町のコシヒカリを使う形で良ければという条件付きで商品化をしてくれました。
販売した商品は幅広い年齢層の方から評価をしていただいております。「藹然」さんには、年間4回ほど商品を作っていただくのですが、かなりの数量になります。基本は道の駅がメインなのですが、現在は販売・導入していただいている所も増えています。
また実は産経新聞からもお祝いのお電話がありまして、広告掲載のお声が掛かりました。山口県以外の中国・四国の八県に3万部の広告が流れることが決定しました。大変ありがたかったです。
Q. 一番苦労した点を教えて下さい
苦労はないです。自分たちのできないことはプロの方にお願いしています。自分たちができるのはこだわった原料を提供することです。知識やスキルを持っている方に、いかに協力していただくかが大事ですよね。
Q. どんな人にどんなシーンで食べてほしいですか
この商品はグルテンフリーなので、アレルギーをお持ちの方には是非食べていただきたいです。もちろん若い人からご高齢の方まで食べていただけるようにこだわって商品づくりをしています。
Q. 出品したきっかけはなんですか
推薦があったことを聞いたからです。元々ジャパンフードセレクションのことは知っていました。何年か前にも一度ご連絡をいただいたことがありました。「牛もち丼」、要はご飯の代わりにお餅を使った牛丼で当時推薦をいただいたことがありました。ただお肉はアメリカンビーフかオーストラリアビーフなんです。それだとお餅だけにこだわっている商品になってしまうんです。お肉にもこだわっていなければ、意味がないと思ったので、申し訳ないのですがお断りをしたという経緯がございました。なので、新庄村産の国産牛になったらお願いしたいなという風に思っていました。
Q. JFS(ジャパンフードセレクション)受賞の反響はどうですか
地元の人であればあるほど、自分たちの土地に対して低く評価をしている方が一定数いらっしゃいます。もちろん地元の商品を大切に思ってくれてはいるのですが、評価をしてもらえるような商品があるのだろうかという風に考えてしまうようなんです。
今回の受賞は新庄村でも初めてだということで地元の観光チームの方にも大変驚かれました。またいただいた審査レポートも読んだのですが、内容がかなり細かく書かれていたので、その点にも驚きました。実際に商品を作るにあたって、関わっている関係者にも受賞の報告をしたのですが喜んでくれました。
審査レポートには今後の改善点や課題などもわかりやすく記載していただいておりましたので、各所にこちらも共有させていただいて、商品をより良くできるように取り組んでいこうと考えています。
Q. 今後の展開で考えていらっしゃることはありますか
今後はオファーがかなり増えてくるのかなと思っていますので、きちんと対応できる組織にしていかなければならないと考えています。
原料のことも含めて、改めて責任を強く感じています。むしろ責任を感じるからこそ企業は発展していくのだと思っていますので、新しい取り組みをしていければと考えています。今は黒豆も作っていますが、アイテムが増え過ぎても、イメージがぼやけたり、インパクトが無くなってしまう懸念があります。そうならないためにも、今ある物をきちんと供給していくことが大事だと思います。多少のデザイン変更などはあるとは思いますが、大きく商品を変えることは考えていません。ただ、告知方法なども含めて工夫していければと思っています。
Q. 会社の展望についてお聞かせください
現在は総勢38名程度の会社ですが、村では一番の大きな会社にはなっています。岡山県がメインの会社です。今後も新庄村産のもち米を使うこと、働く場所を作っておきたいと思っています。そうしなければ子供たちも帰ってこないですよね。職場体験も行っていますが、中々戻ってこないんです。せっかく移住してきても、働く場所がなければ結局はどこかへ行ってしまいますので、定住してもらえないですよね。なので、今の会社を大きくしていけるように事業展開をしなければならないと考えています。
第80回 ジャパンフードセレクション グランプリ受賞商品
餅月せんべい プレーン
株式会社メルヘン・プラザ
人口800人の岡山県新庄村で、住民・行政と一体となり地域活性化に努められている企業。
新庄村産の特産品である「ひめのもち」を使った地産地消のこだわり商品は、味の良さもさることながら、グルテンフリー商品の開発など幅広いニーズに応えながら発展・進化を続けている。地元を愛し、雇用の創出、村の発展にも寄与している企業である。
https://www.meruhen-plaza.jp/